組織は働く人の気持ちでできている

今年も理論政策更新研修を受講してきました。ここ何年も受講の機関は決めています。そこは講師による一方的な講義ではなく、毎回事例に基づきテーマを設定してグループに分かれ討議し、グループとしての考え方をまとめ、発表していくという方式を採っています。毎回いろいろな方の考え方を聴けるため、とても勉強になっています。

今年のテーマは「この企業で、人事評価制度を導入する前に整理するべき課題は何か」、というものでした。グループ6人のうち独立診断士は私を含めて3人でした。「全社に向けて方針を周知する」「職務に応じた役割を明文化する」「目標を設定してPDCAを回していく」「3年後の目標PLを作成して、指標によるチェックを継続していく」などなど、多くの提案が出されました。

私はそれらの提案を聴いていて強い違和感を持ちました。事例の企業は社員20名あまりの製造業です。しかもベテラン社員が多い中で、提示されたような内容で会社は円滑に回っていくのだろうか、新たな人事評価制度を創ることができるのだろうか、という疑問で頭は一杯になりました。

最も大事なことが抜け落ちていると感じたのです。それは働いている方たちの気持ちです。何を思い、何を考えて日々仕事をしているのか、その気持ちを聴かない限り、この会社に血の通った人事評価制度などできるはずがない、と感じたのです。診断士試験で学んだような理論による外形的な提案では、自己満足によるコンサルティングで終わってしまいます。私が提案したのは、まず社長自身が社員一人一人との面談の場を設定し、会社の現状をどう見ているのか、自分はどうしたいのかなど、社員の気持ちをまず聴くことから始めるべきだ、という内容でした。

診断士には、まず相手の気持ちに寄り添うコーチング的なアプローチが必要です。相手とは、経営者のみならずそこで働く従業員の方を含みます。私たちが目指す「コーチングのできるコンサルタント」こそ、「最強の診断士」だとの思いを強くした一日でした。